ノベルる

Emerald Weapon 『第一部』1.風の強い日のこと

ビスケ作
ヒュオーヒュオー。風の強い、ある日の事だった。
いや、もしかしたら、その男が来たせいなのかも知れない。
ガザッ、ガザガザッ。
青と黒のジャンパーで、首にはマフラーの代わりなのか、ボロ布が巻いてあった。左のジャンパーの左袖は縛られていた。
下はジーンズで、右腰には、変わった形の拳銃がしまってあった。手には、ボロボロのカバン。
髪は、銀髪。後ろで縛っている。
その男は、ほおに十字傷があった。そして、いつも難しい顔をしている。
その男は左右の目の色が違った…。右が黒、左が鬼の様な深紅の眼。近くに居るだけでゾッとする。この場所は、荒れ地の町のど真ん中。家はほとんど壊れて、一人も町には居ない。

その男は、何かを探している様だった。少しため息を吐いて言った。
「ここにも無いか…」
首の布を口元まで上げて、また少しため息を吐いた。その男は、自分の右腕を見て目を細めた。
その腕には鎖の腕輪が付いていて文字が刻まれていた。「GRENN」と…。
ガザッ、ガザガザガザァ!!!!
「ンッ!」
その男はサッと拳銃を取り出し、ヒョィンと草むらに飛び込んだ。すると、さっき立っていた場所からこの場所までの間のところに、そこら中の木から矢のような物が20本ぐらい、ガガガガガガガガッ!!!と飛んできた。その後も矢のような物は男に向かって飛んでくる。
ヒュヒュヒュンッ、ドガガガガガガガガッガガァァァァァッ!!!!!!!!
男は、攻撃をヒョイヒョイとかわして、銃でバンッ、ダダンッ!!バキューンッ!!!と撃った。
また攻撃がきて、ヒョイとかわした。男は次の攻撃がくる直前、一瞬で弾を込め…。ダンッダンッダンッ!
木から黒尽くめの男達がドサッ、ドサドサッと落ちてきた。黒尽くめの1人が男に言った。
「フフフ…。お前が渡さない限り俺たちは追い続けるゲホッ…。楽しみにしていろ…。」
黒尽くめの男達は、サーッと砂のように消えた。
男はギロッと睨んで、ゆっくり歩きながら落ちていた石を蹴った。
「クソッ!!!!!何なんだ、あいつ等は!!!!」
男はキレ気味にまた、石を蹴った。
「俺が何をしたっていうんだ!!!」
そして、町の広場に着いた男は広場のベンチに座って少し休んだ。
「・・・・お前は弱い」
男の耳の奥でこの低い声が聞こえた。
「!?」
男はビクッとして起きた。キョロキョロと周りを見て大きくため息をついた。
「俺はグレンだ。他の何者でもない。俺は俺なんだ」
震えながら言った。
こうゆう時、グレンはいつも何かにおびえているようだった。
「…もうここに用は無いな…」
と、ボロ布を巻き直して町を出た。

前の町を出て、3時間ぐらい経ったころ。グレンは木陰で休んでいた。
そろそろ出るかとグレンが立つと、なにやら黄色い生き物が、こっちに向かって突っ込んでくる。
「なっ…なんだァ!?」
グレンは急いで木陰に隠れた。
ドッドッドッドッドッドッドッドッ「クィアクィックィックゥクィクィアッ!!」
鳥のような、竜のような…。どっちかというと竜?
ドッドッドッドッドッドッドッドドドドッ…ドドゥ……
「…行ったか?」
グレンが木陰からゆっくり出ると…。
「クゥ!!!」
「うわぁ!!」 
さっきのやつより小さくて、しかも白い。手のひらサイズのやつがいた。
「まだいたのか…早く行け」
「クゥエッ…」
「ん?」
やつの足をよく見ると、やつの足からは血が出ていた。
「何だ…ケガしてやがんのか」
「クゥックゥッ!!」
グレンはカバンから、薬箱を取り出した。そして、やつを手に乗せて言った。
「じっとしていろ…」
薬を少し、多めに塗った。
白いのはグレンが気に入ったらしく、なかなか放れない。
「オイ…。早く行けよ…」
白いのはグレンのジャンパーのポケットにササッと入った。
「……しかたねぇか」
グレンは頭をポリポリとかいて、また歩き出した。

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