ノベルる

Emerald Weapon 2.小さめの国

ビスケ作
…何時間歩いただろうか。この同じ景色に囲まれて。
さすがに疲れたグレンは、少し休もうと立ち止まった。すると、目の前には少し小さな街があった。
街の上には、チョコンと城まである。
「ふぅ…やっと、まともな場所で寝れる」
少し急ぎ足で城門のところに行った。
グレンは、首に巻いていたボロ布をかぶって言った。
「この街に2日ほど帯在したい」
門番はグレンが喋って、やっと気づいた。
「あ…はい。では、ここにサインを…」
紙を渡された。
あまり名前を知られたくないグレンは、いつも偽名を使っている。
「ロッド…」
「え…ええっと、ロッドさんとお呼びしていいですね?」
少し、ため息を吐いて「ああ」と小さく言った。
「…では、どうぞ」
コツ…コツ・・コツコッ…
門の中は薄暗くてひんやりしていた。
コツ・・コツコツ…コツ・・コツコツッ…

門を出てすぐに、大きな深呼吸をした。
シューポーホホー!!ガタンゴトン!!!
「!?」
街の中を汽車が走っていた。
近くにあった看板に目をやった。
「〜ウェルカム。ディゴシティへ〜」
少し街を歩くと、すぐに街の中心の広場に出た。
もう夕方なのに、広場には、ハトにエサをやっているおじいさんや、ベンチで休んでいる女の人。ボール遊びに夢中なガキ。いろいろな人がいた。
広場を出て、左がホテルや宿の通り。右が商店街。まっすぐ行けば、城門に出る。
グレンは迷わず左へ行き、安いホテルを探した。
ずいぶんボロいが、まぁいいか。と、言って中に入った。
ホテルの中…。やっぱり部屋もボロかった。
グレンは部屋に入ると、すぐにベッドに向かった。
上着やカバンをドサドサ置きながら…。
「…っはぁ〜。寝よう」
白いのは上着に埋れていた。
「クィッ!!クァッ!!!」
やっと出られた白いのは急いでグレンの所に来た。
「……っん??お前か…そういえば名前が無いな。お前は」
「クゥクィッ!!!!」
グレンは辺りを見回した。
「…名前になりそうな物は…無いな」
考えながら、聞いてみた。
「何がいい??」
「クィアッ!!」
「…解らん」
少し考えさせろと、ベッドに転がった。
「そうだな…。白いからなぁ。シロスケってのはどうだ?」
「クィッ!!クィィッ!!」
喜んだ様子にホッとした。
「よし。じゃあシロスケ、俺は寝るから見張りを頼む」
ぼすんっと、ベッドに寝そべった。
「……クィ」
シロスケは夕食になってもグレンを起こさなかった。

真夜中。グレンは寝すぎて目が覚めた。
シロスケは上着の上で寝ていた。
グレンはヒマになったので、2階ではあったが窓から飛び降りた。
「ドゥンッ!!!」
足早にそこを立ち去った。
グレンは広場に行った。
「誰も居ないな…」
グレンは、いろいろ歩いてみた。
「んんっ!?そういえば城をまだ見てないな。行ってくるか」
城門から、真逆の方。橋の奥に小さいお城がチョコンと建っている。
お城には警備兵がいて、お城の周りもウロウロと歩いている。
グレンは草の陰から見ていた。
「ふーん。結構、警備はがっちりしてんなぁ」
そう言って草の陰から出た。
城の近くをゆっくり歩いていると…。
「がっ…ガキ共がきたぞーっ!!!!」
一人の警備兵が全力で走って来た。
「何っ!?みんな、急いで捕獲の用意だ!!!」
「オォォーッ!!!!!!」
「なんだぁ!?」
グレンは、また草むらに隠れた。よく見ると、隣には女の子が居た。
赤いコートで、髪は金髪で肌は白い。
グレンより背が高い。と言うより、グレンの背が小さいのだ。
「えっ…」
女の子は、とても驚いている顔だった。
グレンがどこに着地したかというと、人の上に降りてしまっていた。
「イギギ……」
少し、がっしりした体格で髪は金髪だった。
「降りろ――――っ!!!!!早く、退けぇ――!!!」
この大声で警備兵が、気づいてしまった。
「シークッ!!!!」
グレンは、状況を確認して2人の腕をつかんだ。
「逃げるぞっ!!!」
「えぇっ!!?」
3人は全力で走った。

「はぁはぁ…はぁ…」
街の路地裏。闇に身を潜めながら、小声で話す。
「…はぁ…ところでさぁ、アナタ誰?」
女の子は苦しそうに言った。
「…ぅ…お前から名乗れよ」
「私?私はユウ。アナタは?」
「グレッ…じゃなくて、ロッドだ」
「???」
シークとユウは、首をかしげた。
「あんた等は、あんな所で何やってたんだ??」
「な…なんだっていいじゃん」
「そうだ!!そうだ!!」
2人は焦りながら言った。
「ああ。別にどうでもいいんだけどさ。気になったから」
「…ってかアナタは何やってたの??」
「ん?…俺は城を見に来たんだ」
「ふ〜ん」
2人は、嘘っぽいね〜っという顔で見合わせた。
「…嘘じゃないからな」
「こんな夜中にチビっこいのが、歩き回っていたら嘘っぽいじゃねぇか」
と、シークがからかう様に言った。
グレンは下を向いて震えている…。
「ォ…ォレはっ…」
「??」
「…俺はチビじゃねぇっ!!!!!!!!!」
グレンが声を張り上げたので、2人はびっくりして近くにあった
ゴミ箱やダンボールに飛び込んだ。
「…びっくりしたぁ〜」
「わりぃわりぃ。チビチビって言われると、昔の事を思い出しちまって…」
「そうなんだぁ」
ユウはニコッと笑って言った。
「そうだ。ここでずっと話すには寒すぎるから隠れ家…行こうぜ」
ここ「ディゴシティ」は昼は暖かく、夜はとても寒いのだ。
シークは先に行ってるよと、走っていった。
「ロッド君…だよね。行こう??」
ユウは寒そうに、手をこすりながら言った。
「お…おう」
グレンとユウは急いでシークを追った。

ユウとグレンは、シークの言っていた「隠れ家」に着いた。
「着いた、着いた♪」
ユウは少し興奮気味に言った。
「コレが隠れ家…」
グレンが見上げた先には三角屋根3つの古い豪邸だった。
「コレ…隠れ家か?…」
「そうだよぉ〜。さぁさぁ中に入ろ〜」
ユウに後押しされてグレンは豪邸の中に消えた。
中はとにかく古臭かった。ホコリっぽいし、クモの巣が架かっている所もあった。
長年掃除していない事を教えている様でもあった。
「ただいまぁー!」
ユウはダイニングのドアを開けるなり大声で言った。
「おう…お帰り。で、後ろのは誰だ??」
1番高価そうな椅子に座ってタバコを吸っているオッサンが言った。
左右には、ガードマンみたいな人まで居る。
その人はスキンヘッドでスーツ姿。少しだけヒゲが生えている。ジョリジョリできるくらいに…。
「えっとね…。ロッド君だよ。城から逃げる途中に助けてもらったの」
「!!?(待て待て待て!!そんな話じゃなかっただろ!!)」
グレンは話が全然違うので、心の中でツッコミを入れた。
「だからさぁ…お礼しようと思って連れてきたの」
「それは解った…。ユウちょっとこっちに来い」
ユウとオッサンは部屋から出て行った。
人は他にも結構居た。奥の方の小さいテーブルでは、シークとさっきのオッサンの左右に居た。
男達がトランプをしていた。
「おぉ、ロッド。トランプしようぜ〜」
「ん?…いいけど」
よく見るとポーカーだった。
「んじゃ、そこ座って」
椅子に座ると、カードを5枚配られカードチェンジをした。
「へへへ…俺は強いぜ」
男達の一人が言った。
だが、グレンは無視した。
「ちっ…(何だアイツ、すかしやがって)」
「…よし、終わったな。じゃあ俺がいっせぇのぉ〜でって言ったらカード出してくれ」
「いっせぇのぉ〜でっ!!」
待ちきれずに男達が先に出した。
男達2人は、どちらも自分が勝った様な顔をしていた。
シークが呆れ顔で出した後に、グレンがゆっくりと出した。
「…ロイヤル・ストレート・フラッシュ…だったよなコレ…」
一瞬にして男達の満足気な顔が変わった。
「強ぇ!!コイツ強ぇなっ!!!」
「ま…マグレに決まっているじゃないか!!」
コレもグレンは無視した。
「じゃあ…マグレかどうかは勝負で、なっ?」
「おっけぇ」
また、カードを配ってさっきと同じ様にカードチェンジした。
「うへへへ…来たぜぇ」
男達の一人が壊れた様に言った。
「マジかっ!!」
男達のもう一人が驚きながら言った。
「いっせぇのぉ〜でっ!!」
「フルハウスだぁ――っ!!!」
壊れかけた男が叫びながらカードをテーブルに叩きつけた。
「あちゃー。俺は負けだ。スリーカード来たのにな」
シークは自分の頭をポンッと叩いた。
男達のもう一人も負けたーっと、頭を抱えた。
シークがワクワクしながらグレンに聞いてみた。
「ロッドはどうだ??」
「ん?…フォーカードだ」
「ゲゲッ勝ったと思ったのになぁ…」
壊れた男は少し直った。
「…兄ちゃん、今日は運が良いのかね〜」
もう一人の男は、焦りながら言った。
「じゃあ、もう一回やりますか」
シークはカードを配った…。
「いっせぇのぉ〜でっ!!」
みんながいっせいにカードを出した。
今回は勝っただろうと、男は威張って腕組みした。何せ、自分はフォーカードが出たんだから…。
「ロッド…ちゃんとやれよ」
「ぅん?あぁ…わりぃわりぃ。ストレート・…」
「!!!…やったー!!!!勝ったー!!」
男は喜んだ。だけど、男は勝ってはいなかった。
「え、フラッシュ?……」
「いやー、強いね。マジで」
「すごいな、ロッド!!ここで1番強いゴルーに3回も勝つなんて…」
シークは拍手しながら言った。
壊れていた男はゴルーと言うらしい。
「あ、自己紹介してなかったなー。俺はリンド」
もう一人の男は言った。
「仲良し3人組みか…」
「ちっ…ちげぇーよ!!!」
ゴルーとリンドとシークは声を揃えて言った。
「…揃ってんじゃん」
グレンはため息混じりに小さく言った。
「あ…ぷぷっアハハハハハハハハッ!!」
3人は可笑しすぎて、椅子から転げ落ちた。
ドガンッッ!!!!!!!
誰かに蹴られてドアがぶっ飛んだ。
「テメェー等!何やってやがる!!?敵が来たから外出ろ!!!」
「ス…スイマセンッ!!ボス!!!」
3人は頭を下げた。
「解ったら、早く行け!!他の奴らも外に向かっている」
「ハイッ!!!!」
3人は慌てて外に走って行った。
「ボウズ!!」
「ん?(俺か?…)」
グレンは、一瞬カチンときた。
「一緒に戦ってくれねぇか??」
「良いけど…あ、復讐とかはゴメンだけどな」
「全然そんなんじゃねーよ」
「なら、OK。…ん?ちょっと待て。相手は何だ??」
ボスは、ハァッ??っと言う顔でこっちを見た。
「人間に決まってんだろぅが!!…って言っても本当に人間か??ってくらいヒデェ事してくるんだけどな…」
「そうか…。じゃあ、アンタの仲間全員中に入れろ」
「!!? 一人で戦う気か?無理だ!!俺達が全員で掛かっても追い払う事しか出来ないのに!!
お前、まさかコレに命賭ける気か!!」
「誰がこんな自分に徳の無い戦いに命賭けるかって!」
ボスは驚いてばっかりだった。
「じゃあ…勝つのか?」
「おぅ…。5分もらおうか」
グレンはボスに背を向けながら言った。

ガキィィィィィンッ!!!!ドギャンッ!!…ヵァ……
すごい音の鳴る戦場が一瞬にして静かになった。
「ボス〜。本当に大丈夫なんですかね」
「し…知るかっ!!!」
全員中に入った。そして、全員が窓の外から目が離せなかった。
「ロッド君…」
ユウは祈っていた。首飾りを握りながら。
その頃、外のグレンは…。
「ふう…。ん?あいつ等かぁ。よし」
目の前に居たのは、すごい重装備の兵達だった。
背には、大きな剣を背負っている。
「…ダッセーかっこだなぁ。オイ」
グレンはフンッと鼻で笑った。
「誰だ、お前は…。コソ泥の奴等を出せ」
重装備の兵は呆れた様にグレンに言った。
「(?…コソ泥?)俺じゃ、相手にならんってか?」
短気なグレンは少しキレ気味に言った。
「ああ。そうゆう事だっ!!!!!」
ズガァァァァ――!!!
重装備の兵は切りかかった。
「ぅおっと…」
グレンはそう言うと暗闇に消えた。
「どこだ!!!さっきのチビはどこだ!!!」
重装備の兵は、辺りをキョロキョロと見回した。
「チ…ビ…カァッチ〜〜〜〜〜ンッ!!!!頭にきたゼッ!!!!!決めた!!皆殺しだっ!!!」
グレンが、ついにキレた。
「くそっ!!どこだ。出て来い。クソチビ!!!!!!」
この重装備の兵はグレンを怒らせる原因だ。
「あ―ぁ―小さいからって、舐めてんといい事無いぜ?」
グレンは兵の頭の上で腕組みしていた。
「!!!!!!」
「今から許してって言っても許さねぇからな。特にお前は地獄行きだから」
グレンは兵のヘルメット見たいのを取って、力いっぱいぶん殴った。
バキャッ!!!
「ウガァッ…。こんのォ野郎!!!!」
兵は手を上に上げてグレンを捕まえようとした。
ガシン!!!!
だが、グレンはヒョイッとジャンプしてかわした。そして、兵の後ろに降りた。
兵はグレンが後ろに居ると知らずに、キョロキョロしていた。
シュピィィィィィィ!!!!
「フンッ、とんだノロマ野朗だな」
ドゥンッ……
グレンは自慢のスピードで、言うのと同時に兵を倒した。
「な…何だアイツ。メッチャメチャ強いぞっ」
兵達は不安そうにヒソヒソと話していた。
グレンは暇そうに、その様子を窺っていた。
「アレ!?戦ってないや…。兵達は何やってるんすかねぇ??」
中に居るみんなは、そわそわしていた。
シュボォッ…
「っふぅー…さぁな」
ボスはタバコを吸いながら言った。
「ボス!?心配じゃないんですか???」
「しっ…心配に決まってんだろ!!あんなチビっこいの、一人で戦わすなんて…」
「テメェーら!!聞こえてんだぞ―!俺はチビじゃねぇ―って言ってんだろ!!!!!」
グレンは大声で中のみんなに言った。
「す…すげぇ耳良いな。アイツ…」
「ロッドはいろいろと凄いところが有るなぁ…」
シークは関心しながら言った。
「それにしても、あのボウズ…。やけに余裕こいてやがるな(あれ?…もうタバコないや…)」
ボスはポケットに手を突っ込みながら言った。
「あ。そう言えばそうだ!!あんなに強いなら、警備兵も倒せばよかったのに…」
シークは途中から呟きになりながら言った。
ドガ――――ンッ!!!
「!!!!???」
その頃、外の戦いは激しくなっていた。
ズザァザァァァァァァァ!!!!
「痛っ…汚ねぇ手ばっか使いやがって!!!」
グレンは額から少し血が出ていて、服がボロボロになっていた。
「な!!…何があったんだ!!!!」
部下達(シークやゴルーなど)は不安そうに話始めた。
ボス達が話している間に何があったかというと…。

「いい加減、話を終わりにしてさぁ。戦うか、逃げるかしろよ…」
グレンは呆れていた。
「ヒソヒソ…ヒソヒソ」
「…オイ!!!聞いてんのっ…うわっ!!!」
シュルルルゥ…シュパァァァァァン!!!!!
兵が大きめの手裏剣を投げてきた。
「私達は貴様を全力でぶち殺す事にした。覚悟しろ」
「!!…っへ。よく言うじゃねぇか」
「フンッ…掛かれぇ――っ!!!!!」
ドッドッドッドッドッドッドッドドッ!!!!!!!!
「な…何ィっ!!」
ガシッガシッガシッガシッ!!!
兵は四方八方から現れ、グレンを捕まえた。
「死ねぇ―――!!!!!!」
隊長らしき兵が、身動きの出来ないグレンにタックルしてきた。
ズガァァァァッ!!!
「グアァッ!!!!」
兵達は、倒れたグレンの顔面目掛けてパンチしてきた。
ドガッバキッ!
そして、兵達が屋敷の中に入ろうとした時、グレンはゼーゼーしながら言った。
「…ォイ。っ俺はまだ死んじゃいねぇぞ…。ぉ…何処行きやがる??」
「もう、その体じゃ戦えまい。そこで餓死でもしていろ」
隊長らしき兵はグレンに背を向けてアゴをさすりながら言った。
「たっ隊長っ!!!後ろに奴が!!!!」
兵の1人がおびえているように言った。
「何が居るって???」
隊長らしき兵はゆっくりと後ろを向いた。
目の前には銀髪の小さい少年が居た。
「残念ながら俺はこんな物じゃ死なねぇんだ」
ドガァァンッ
グレンは言い終わると同時に、また力いっぱいぶん殴った。
「ギャッ!!」
隊長らしき兵は兵達のほうに吹っ飛んでいった。
「うっ…ぉ重いッス!!隊長!!!…隊長??隊長ってばぁ!!!!」
隊長らしき兵は完全に気絶していた。
「たいちょっ…苦しっ…」
下敷きになった、何人かも気絶(?)した。
「フンッ…そのバカはどのくらい重いんだかな」
グレンは、隊長を馬鹿にしながら言った。
「ぁ…アイツ隊長をぶっ飛ばしやがった!」
「強ェェ!!!強すぎだぁぁぁぁぁッ!!!!!」
兵達はグレンの強さに、「ヒィィィィッ!!バッ化け物ぉぉぉぉ!!!」などと言って逃げようとした。
ドォ――ンッ!!
「痛ぇ!何するんだよ!!」
兵達の前に、勇敢(?)な兵が立ちはだかった。
「そうやって逃げんのか…俺は許さねぇ」
「何?…言ってるんだ。アイツには敵わない!!」
どうやら、兵達は仲間割れしているみたいだった。
「アイツを殺さないと上に合わせる顔が無いんだぞ!」
「いや、しかしな…」
「シカも何も無い!!!アイツを殺して認めて貰おうぜって!!!」
「……解った。頑張ろう」
「じゃあ、仲間割れのフリをしろ!!」
「解った。そして??…」
「ん〜…!…そこのお前ら!!!」
勇敢(?)な兵が指差したのは、ボウガン兵だった。
「はい??」
「お前等は、俺達が仲間割れのフリをしている間にドサクサに紛れてあの白頭の後ろに回れ!!!」
「了解っ!!!」
ワーワーギャーギャー!!
「?…何だ??」
仲間割れは、もっと酷くなっていた。
「さっきより何か………!!」
シュピィッ!!ズドドドドッ!!!
ボウガン兵は、グレンの後ろの方から攻撃してきた。
矢はグレンの額にかすった。
「痛っ…汚ねぇ手ばっかり使いやがって!!!」
グレンは額を押さえながら叫んだ。――――
と、いう事だった。

勇敢な兵は、威張っていた。
「ハッハッハッハァ!!…戦いにクソも汚いも無いんだよ。白髪くん」
「うるせぇなっ!!コレは銀髪だ!!!!だいたい、お前の方が白髪じゃねぇか!!!」
「キィィィ〜。うるさいな!全員で…撃てぇー!!!」
ドガガガガガガッ!!!!
グレンは簡単にそれをかわした。
「こんなもんかっ!!!」
兵は次々と撃って来るが、グレンには楽勝だった。
「あの白髪!!!ちょこまかとぉ〜!!よし、お前行け!!」
勇敢な兵は弱気な兵を指差して言った。
「え?俺ッスか??」
「そうだよ!!お前!」
「いやッスよぉ〜。死んだらどうするんですかぁ」
「(カチンッ)いいからサッサと行け!!!」
弱気な兵は突き飛ばされた。
「うわ〜」
グレンの前に出てきてオドオドしながら口を空けた。
「あ…あの…」
「あ゛ー??」
グレンはギロリと睨んだ。
「ヒィィィィィッ!!こっ…降参します」
兵は土下座して言ってきた。
「はぁ!?降参??」
その後、兵達は大急ぎで逃げ帰って行った。
「うわー!!逃げろー!!!殺されるー!!!!」
と、言って…。
「何だ、あいつ等。最初から戦う気無かったのか??」
そして後ろからも…。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!ロッド、スゲェェェェェェェ!!!!!!」
みんなが飛び上がっていた。
ユウがグレンに近づいて来て言った。
「ロッド君ありがとう。ココを救ってくれて…」
「いや、あいつ等は絶対また来る」
「…そっか。でも、その時はその時だね」
「………」
「オイ、ボウズ!!!!良くやった!!コレやるわっ!!」
そう言って、ボスが投げた物は…。
「ども…って酒じゃねぇか!?」
「ガハハハハァ!!!飲め飲め!!!」
「待て待て待て!!!ヤメロッ!!」
ゴルー達は酔っ払って、グレンに無理矢理酒を飲ませようとした。
「ダメだよー」
ユウが、グレンの手を引っ張って外に連れてった。

星が良く見えるきれいな空だった。
「本当に…ありがとね」
「もう、いいって」
「そっか…」
グレンとユウは2人きりでテラスに居た。
「ここね。私のお気に入りの場所なの」
「ふーん…」
「落ち着かない??」
「ん。まぁまぁかな」
「じゃあ、ロッド君のお気に入りの場所は??」
「そんなもんねぇ。考えた事もないし、第一自分の住んでいた所も知らねぇ」
「え?何それ…」
「だから、記憶喪失…なのかも知れない」
2人の話が途切れた。
「でっ…でも、きっとその記憶戻るよ!」
「何でさ」
「何でって言われても…」
「…俺には、帰る場所なんか無いのかも知れない」
「そんな事ないよっ!!」
「まぁ、俺はそれでも良いと思ってる…」
グレンは拳を握りながら言った。
「帰る場所が無かろうが、行く場所が無かろうが関係ねぇ!!」
ユウは呆然と聞いていた。
「守りたいモノを、命がけで守れたら何もいらない」
「…それはダメだよ」
グレンがバッとユウの方を見た。
「だってさぁ。記憶が無いって言ったってロッド君の帰りを待っている人だって居るかも知れないじゃん」
「……」
「私は…居るのかな…」
「お前も記憶喪失なのか??」
「違うよ。私は生まれてすぐに、誰かに連れて行かれちゃったんだって」
「その誰かってのは??」
「…ボスは教えてくれないの」
「ふ〜ん」
「で、ボスがその誰かの建物に入ったら私が居たらしいの。その時は誰も建物に居なかったんだって」
「あのオッサンは命の恩人って事か」
「うん。それで今、ココに居られるの」
「良かったなぁ…ってワケでもねぇか。がんばって生きてれば、会えんじゃねぇ??」
ユウは、テラスの手すりに肘かけて言った。
「私…ココを出ようと思っているの」
「…いきなりだな」
「え?前から決めていたの。だってココに居るだけじゃ、お母さん達を見つけられないでしょ」
「んー。まぁ…そうゆう事になるかな」
「じゃあ、ロッド君と一緒に行くよ」
「ぶっ!!…はぁ!?」
グレンが、もし水を口に含んでいたら吹いていた。
「めっ…迷惑は、掛けないからさ!!」
グレンの方を見て慌てて言った。
「迷惑は掛けない…って言われてもなぁ…(俺、女とか苦手だし…)」
グレンは頭をポリポリ掻いた。
「ねぇ、お願いだよ〜」
「ん…ったく。解ったよ…(はぁ、何やってんだ俺は…)」
ため息を吐いて、空を見上げた。
「っ…〜!」
ユウが震えてうずくまった。
「???…どうした!?」
グレンが話しかけると、ユウはチラッとこっちを見た。
「ぅ…嬉しいのにさぁ。何か、苦しいの…」
「……ココはお前が育った場所だ。本当は出たくないんだろう??」
「…うん。でも、お母さん達には会いたいし…やっぱり、ボスには悪いよね…」
ユウは泣きそうだった。
「俺は、あと1日はこの街のホテルに居るから、心が片付いたら来い」
シュルルッぱさぁ
グレンはボロ布を取りながら言った。
「ぅ…っ…ううっ…ぐすんっ……うんっ…解った。ぐすんっ…」
ユウは、もう泣いている状態だった。グレンはそんなユウの肩に、ボロ布をかけてやった。
「泣くなよ。まだ別れちゃいねぇーだろうが」
「ぅうっ…でもっ。ぅ…ぅぐすっうわぁ――ん―――!!」
ユウはグレンに抱きついた。
「うわぁ。ヤメロッ離せって……」
グレンは本当に、こうゆうのが苦手だった。
「…もう、寒いし。中に入ろうぜ…」
「ぐすっ…ぅっうん」
ギィィィバタンッ
テラスのドアを開けて、グレン達は隠れ家の中に消えていった。

「っ!!…ッ臭!!酒臭ぇ!!!!」
ゴルー達は酒を飲みまくって、大きなイビキを掻いて寝ていた。
グレンとユウは鼻をつまみながら、その場所を歩いた。
「じゃあ、俺は帰るぜ?…」
「うん。お休み」
グレンとユウは廊下の所で話していた。
「お休みってか…もうすぐ、夜明けなのに??」
「そっか。じゃあ何て言えばいい?」
「知らん。何でもいいじゃないか」
「そうだね。バイバイ」
ユウは小さく手を振って見せた。
グビグビッキュポン!
「ボウズ、帰るのか?」
ボスが、グレンの後ろにいきなり現れた。
「うおぉ!?そのつもりだけど、何かようか??」
「あぁ、お前に隠していた事があってさ…」
「隠していた事??」
グレンは帰りたかったが、この話も聞きたかった。
「聞きたいなら、ついて来い」
「………」
ボスは酒瓶をそこらへんにぶん投げて、玄関の近くにある階段を上っていった。
「先…に行ってるね…」
ユウはボスを追いかけて上っていった。
「…聞いていくか」
階段を上るとすぐに、ロウソクの今にも消えそうな光が見えた。
「来たか…」
部屋にドアは無く、壁にはいろいろな地図が貼ってあった。
「まぁ、座れ」
ボスはそう言うと、ポケットからタバコを出して吸い始めた。
ジュボォッ…スー、フゥー。
天井に黒い煙が上がっていく。
「で、隠し事ってのは??」
ボスは机に足を乗っけて、上を向いてタバコを吸っていた。
「ふぅー…まず、座れって」
「ぉ…おう」
椅子と言うよりは、ちょっとした台のような物を出された。
「長い話になるが…。大丈夫か?」
「あぁ。俺は全然大丈夫だけどさ」
「じゃあ、話すかな…」

このページの一番上へ

感想を書く

ホーム戻る