ポケットに隕石を |
砂野 徹作 |
あるとき、 うめのみほどの隕石が世界中に降りました。 雨のように、人の数の十倍ほどの石がひと晩のうちに。 水に浮くほど軽かったので被害はなかったけれど。 それは あかやきやあおやしろやうすむらさきやふかみどりの うずまきやまだらやしまもようやみずたまや さまざまの色とモヨウの。 トクをすることに熱心な者たちはけんめいに集めました。 けれど 工芸に使うにはふぞろいで 宝石あつかいするには多すぎ 加工しようと圧力をかけるとたちまちとけてしまいます。 捨てられ忘れられてゆきました。 そのあとに ひとつかふたつをはじめて拾う人たちもありました。 ポケットに隕石を 入れたひとはみんな幸福になりました。 と言ってもべつに、 石に魔法の力があったわけではありません。 幸せになったのはそのひとたちが、 ありふれたものの美しさを知っていたからです。 |