ノベルる

操り師サマと操り人形

春風あやめ 作
――私は人形。
操り師ディアスサマに作られた人形第一号。
そう……感情なんて持ってはいけないの……。

普段は無口なディアスサマ、私の前でだけお喋りになるの。
普段はマントを頭から被って素顔を隠しているディアスサマ、私の前でだけマントを取って素顔を晒すの。
だから……知ってるの。
貴方サマの優しい性格も、深い透き通った緑の瞳も、艶やかな黒い髪も……。
どうしてこんなに綺麗な顔を隠すのか、いつも不思議だった。
でも、貴方サマの笑顔を見てたらそんな疑問なんて消えていくの……。

――ダイスキ――

その言葉は、服従の意味でしか無いはずだった。
ううん、服従の意味でしかその言葉は使ってはいけなかったの。
感情を持ってはいけないのだから……。
所詮私は操り師ディアスサマの人形。
手や足、色んな所に巻き付いている糸とそれを吊り下げた木の棒で、貴方サマに踊らされる。

――ニンゲンニナリタイ――

……いつか夢見てるの。
ディアスサマと一緒に踊ることを。
私がお姫サマで、貴方サマが王子サマ。
だって、人形劇の王子サマは喋らないんですもの。
私が人間になったら、一番に貴方サマと踊りたい。
操られてじゃなくて、自分の意思で。
貴方サマの器用な手と、自分では動かしたことの無い不器用な私の手を結んで、美しいワルツを踊りたいの……。
いつか……。

このページの一番上へ

感想を書く

ホーム戻る