ノベルる

アクセス1

影月 香作
  亜季は学校から帰ると、2階の自室に駆け上がった。
  両親はまだ帰ってきてない。こんなときしかこの一時を味わえないのだ。
  部屋に入るとすぐさま机の上のパソコンの電源を入れた。パソコンが起動する音を耳にしながら制服を着替え、いすに腰を下ろした。そしていつものサイトを開く。
  画面上にはピンクの背景に黒い大きな文字で「アクセス」と書かれている。今亜季がはまっているサイトの名前だ。
  このサイトに入るにはIDとパスワードを入れなければならない。キーボードでIDとパスワードを正確に打つと、ページが開いた。チャットのページだ。
  彼女はキーボードを叩き、文字を入力した。
「ただいま〜!今帰ってきたよ^^」
すると由香という名前の横に文字が出た。
「おかえり☆私も今来たところだよ。」
他の子たちも「おかえり!」と文字が出ている。
  ここは亜季にとって家みたいなものだ。
  彼女たちは自分の家族。パソコンの中だけの。


  悩みを共有するこのサイトで決まって話される話題。
「私の母親がパソコンで遊んでないで勉強しろってうるさくてさ。
  私、大学なんか行きたくないし、料理学校に通いたいんだよね。
でも親は大学に行ってればいい事あるからとか言って。」
  絵里がいつものように愚痴り始めた。
  そう。みんなの悩みは母親の言動。自分の願いを叶えてくれない母親にみんな少なからず嫌な思いをしていた。私もその一人だ。
  キーボードを打って、自分の悩みを話した。
「私も。私歌手になりたかったのに、高校入った途端、音楽はするなとか言われて。今まで勉強してなかったからついていけないよ(涙)」
「私も私も。」他のみんなも口々にそう言った。
「超ウザイよね。子供の気持ち考えろって言うの!」
  不良っぽい言葉をいつも言うユウがみんなの気持ちを代弁した。
「ユウに1票!」
私は冗談交じりに言った。
  その時、家のドアが開く音がした。


  「亜季〜?帰ってるんでしょう?夕飯の用意手伝って〜。」
亜季はため息をついた。大きな声で言い返す。
「今行く〜!」
  至福の一時を邪魔する母が大嫌いだった。パソコンを扱っているだけで怒られる。
『ゴメン、親が帰ってきたみたいだから、また夜にね。』
  彼女は文字を打ち込んだ。
『こっちも帰ってきたから。またね。』
みんなも同じみたい。
  パソコンをスタンバイの状態にして、上から布をかぶせた。
  1階におりて母の手伝いをする。もうすぐ誕生日だというのに母は昔みたいに誕生日を祝ってくれなくなった。
「あんた、もう17なんだから、言われなくても手伝いぐらいしなさいよ。」
母が愚痴をこぼす。
  亜季はただ我慢して聞いていた。
  言い返すなんてもうあきらめている。意味のないことだから。


  亜季は、夕飯を食べるとすぐに部屋に戻った。
  とりあえず、今日の宿題を済ませる。
  部屋の押入れに隠し持っていた、ギターを見てため息をついた。
  なんで、歌手はダメなのさ。母さんは好きな事してるじゃない。
  母は、毎週1回ママさんバレーに行く。生き生きした表情で家を出るのがいつも癇に障る。
  MDプレーヤーにMDをいれ、ヘッドフォンをつけた。そして、再びパソコンにかじりついた。
『母親って超いや〜!なにかと文句言う!』
  自分の思いをパソコンに打ち込んだ。
『なんかあったの?』
  みんな私の話を聞きたがる。
『もうすぐ17なんだから言われないでも手伝えだってさ!』
『私も言われる〜。威張るなって感じだよね〜。』
みんなも『うんうん』とうなづいてくれる。
  こういうのが家族だよ。夕飯の時間も何一つ会話を話さない父と、近所のおばさんの文句ばかり言う母。人の話を2人とも聞こうとなんかしない。
『ねえ、このサイトのこと、他の誰かにしゃべったことある?』
『ないよ。結構知られてないよね。』
『だよね。最初の人数からほとんど変わんないし。メンバーも同じだし。』
絵里は言った。
『これは私たちだけの秘密にしよう。ここが私たちの心の家!』
亜季はみんなに言った。
『うん!私たちは家族!』
みんな一斉に文字を打った。


  こうして「アクセス」は私たちだけの秘密になった。
  「アクセス」は女子高生限定のサイト。男の子が入ってくることはない。
IDとパスワードを知ることが出来ない限り、会話の内容を見ることも出来ない。
  でも、このサイト、誰が開いたのか不明なんだよね。
  私は、ネットでたまたま見つけた。もちろんその時はパスワードが全く分からなくて、開くことも出来なかった。
  たまたま、電車の中でしゃべっている女の子が「アクセス」のことを話していて、思わず聞いてしまった。その女の子がユウと絵里。2人は同じ学校らしくて、仲がいい。
  「アクセス」を始めたとき、私は、彼氏に突然別れを切り出された頃だった。理由は何度聞いても分からなくて、私は自分がいけないんだと責めつづけた。でも、「アクセス」でみんなに意見を求めるとたくさんの理由が挙げられた。他に女が出来た。もともと遊びだった。それか、引っ越すか何かで遠くに行くから。
  結局答えは、東京に行くからだった。
  私の夢と彼の夢は同じ歌手。彼は一足先にその切符を手にしたのだった。
それが言いにくくて、後ろめたかったのだろう。それに、福岡と東京じゃ、遠距離だし、お金のない二人には無理な話だった。
  それからは「アクセス」が自分の居場所になった。
  学校はきらい。家も。パソコンだけが私の心を癒してくれた。


  男は、彼女たちの会話を見ていた。出てくるのは、母親の不満ばかりだ。
  男は、女子高生の心理を知りたくてこのサイトを開いた。やがて、彼女たちを娘のように思うようになった。そして、彼女たちを喜ばせたいと考え始めていた。
  男は、どうやったら彼女たちを喜ばせられるか、しばらく考え、その答えにきづいた。
  それは恐ろしく残酷なものだ。だが、彼の顔には微笑が浮かんだ。これほど楽しいことはないではないか。
  彼女たちは覗かれていることも知らずしゃべり続けていた・・・。


  亜季は、母親に急かされ学校へいった。学校なんか大嫌い。
  亜季は学校では一人ぼっちだった。授業にはついていけないし、しゃべる相手はいない。いますぐにでも帰って、「アクセス」のみんなと話したい。
  でも、学校を卒業できなくなるのは困る。はやく家を出て、自分で働きたい。
  学校が終わると、走って家に帰る。誰もいないはずの家の扉が開いていることに気づいた。
「母さん・・・?」
  小さな声で呼んでみる。でも、母さんは今日遅くなるって言ってた。父さんが帰るのは夜。そう頭で整理して異常事態だと気づいた。
  ひょっとして泥棒?家のドアに、少し傷がついている。
  亜季はそっと、中にはいった。部屋の中はあらされている。まだ中に誰かいるかも。
  亜季の脳裏に部屋を物色する泥棒の姿が浮かんだ。
  1階にはいない。まさか。私の部屋?彼女はそっと階段を上る。部屋のドアは開け放たれている。亜季は、そっと部屋を覗きこんだ。
  「よかった・・・誰もいない・・・。」
亜季は部屋に入ってほっとした。
  部屋は少しあらされているが、それでもお金は盗まれてない。しかし、いつもは消してあるパソコンのスイッチがついていることに驚いた。
  急に怖くなり、家に鍵をかけ、外へ飛び出した。


  亜季は家の前にずっと座っていた。こんなときこそそばにいてほしいのに。
  仕事ばかりの両親はまだ帰ってこない。
「怖いよ・・・・。」
泣きそうな声でつぶやいた。
  その時亜季の携帯が鳴った。
「もしもし、母さん?あのね・・・・。」
家の異変を話そうとした亜季の耳に飛び込んできた母の言葉は予想外だった。
「亜季。ごめんけど、今日帰れそうにないの。一人でご飯食べてね。パパも徹夜だって。じゃあ家の事よろしくね。」
「待って・・・!」
  亜季の言葉をさえぎるように電話は切れた。
  こんな家の中で過ごせない。そういえば、警察にも連絡してないや。
  電話をしようとしてふと手を止めた。視線を感じる。誰かが見張っている。こわい。
  亜季は家に戻ると、部屋の明かりをつけた。怖がってばかりいられない。
  なんで、パソコンをいじったのか。さっきから気になっていた。マウスを動かすとアクセスのサイトが開かれていた。
  IDとパスワードを入れて、Enterキーを押したが、
「このIDとパスワードは違います。」
と出た。
「え?なんで?」
  再度同じパスワードを入れる。開かない。
  空き巣なんかじゃない。亜季は悟った。アクセスの秘密を知る誰かが、IDとパスワードを無効にしたんだ。
  亜季は家の中をかたづけ、夕飯も食べずにベッドにもぐりこんだ。恐怖が体中を覆っていた。


  次の日、携帯でユウと連絡をとった。
他のみんなが亜季がサイトに来ないことを心配していたようだ。
ユウは、気になることを言った。
「最近、みんなストーカーに狙われてるみたいなんだ。家に帰る途中、後ろからずっと足音が聞こえるって。
  私もさ、イタズラメールが来るようになったんだよね。携帯とかパソコンに。『君の願いを叶えてあげる』って血文字で。」
「やだ〜!怖いよ・・・。私のところにも昨日空き巣が入ったの。でもお金は取られてなくて、パソコンがいじられてたの。」
  亜季は昨日の事をユウに詳しく伝えた。パスワードとIDが無効にされていたこと、警察には通報していないことも。
「サイトを作った奴ならできそうだよね。ひょっとしたら私達の会話、覗いてるかも。」
ユウの一言で亜季は顔が青くなった。
「どうしたらいいの〜!?」
亜季は頭をぐしゃぐしゃかき回しながら言った。
  このままサイトを使えばみんなが危なくなるかもしれない。でも、みんなと話せなくなるのはイヤ。
「京ちゃんに頼むのはどう?」
  ユウは突然目を輝かせていった。


  京ちゃんとは、ユウの知り合いで近所に住んでいる2つ上のお兄さんだ。京ちゃんはパソコンについて詳しくて、自分でホームページを作ったりしているらしい。
  ユウの提案は、京ちゃんにみんなが集まれる「アクセス」みたいなサイトを作ってもらおうというものだった。
  確かに京ちゃんなら信頼できる。でも、「アクセス」の事を話さないといけないかも・・・。
  とりあえず、京ちゃんの家に来た亜季は、「アクセス」の話題は出さず、女子高生限定サイトを作ってほしいと言った。
  パスワードとIDで管理された、誰にも見られないサイト。亜季はその空間がほしいのだ。
  京ちゃんは話を聞いて、こう切り出した。
「いいけど、俺には見えちゃうよ。サイトを管理する管理者はパスワードもIDも見えちゃうし。
  どうしても作りたいんだったら、作り方教えてあげるから、ユウか亜季が自分で作って管理者になれば?それなら問題ないんじゃない?」
  京ちゃんの提案は確かにと納得させられた。だが。2人は考え込んでしまった。
  自分達はパソコンについてあまり詳しくない。そんな自分達が果たしてきちんとしたサイトを作り、管理できるのか?
  京ちゃんに一応、サイトの作り方をメモしてもらい、ユウにみんなにそのことについて異論はないか聞いておいてと頼んで、亜季は家に帰った。


  京ちゃんからの提案にどうしようか迷いみんなに相談した結果、少しはパソコンを使えるユウがサイトを新しく作ることになり、みんな「アクセス」はしばらく開かないことにした。
  ほっと安堵していたある日、ニュースをぼんやり見ていた。
  ニュースのキャスターが女子高生の母親が殺害されたと原稿を読み上げ、中継がつながった。その中継場所を見た途端、寒気がした。
  それは絵里の家だったのだ。私は、部屋を飛び出した。
  「亜季?どこにいくの?勉強は?」
母の言葉を無視して家を出た。
  亜季がその場所に着いたとき、絵里の家の前は報道陣でいっぱいだった。
傍にいた警察の人に友達であることを伝えても、
「今は入れない。」と言うばかりだ。
  亜季は、絵里の携帯に電話した。
「亜季?」絵里の声は少し強張っている。
「今絵里の家の前にいるんだけど、警察の人入れてくれなくて・・・。
大丈夫なの?」
「・・・警察の人にいってみるから待って。」
そういうと絵里は携帯を切った。
  しばらくして、警察の人が、そっと裏口に案内した。
  家に入ると、絵里が涙を流して座っている。その傍には。
  赤い血だまりが生々しく残るその現場を見て、亜季は凍りついた。


  「あなたは?」
唐突に刑事から聞かれ、私は、ドギマギしながら答えた。
「水島亜季です。絵里の・・・ここの娘さんの友達で。」
そう答えると、刑事は突然私を質問攻めにした。
「この家に来たことは?」
「一度だけありますけど・・・。」
「じゃあ彼女のお母さんと会ったこともあるんだね?」
「いえ。絵里にあげてもらったときは、お母さんいなかったので。」
「町で絵里さんと歩いているところを見かけたことは?」
「ありません。」
「じゃあ、今日の午後1時から3時の間は何してました?」
  質問の意図がだんだん読めてきた。
  亜季は不機嫌そうに答えた。
「私を疑ってるって訳ね。家にいました。でも家族は証人にはならないでしょう?」
「ああ。よく知ってるね。」
刑事は意味ありげに聞いてくる。
「推理小説読むの好きですから。」
ぶっきらぼうに答え、絵里の隣に座った。すると刑事は今度は絵里に聞いた。
「君は、家に帰ってきてお母さんが倒れているのを見つけたんだよね?」
「・・・はい。」絵里はまだ涙ぐんでいる。
「今日は日曜なのにどこに行ってたんだい?」
「友達と遊びに。時田ユウって子です。」
「そう。ところで、近所の人が朝、君とお母さんがもめてる声を聞いたって言うんだけど。」
  ここで、亜季の堪忍袋がきれた。
「ちょっと!絵里を疑ってるんですか!?実の母親を殺すわけないでしょう?」
「君には聞いてないよ。」刑事は亜季にそう言うと、絵里に聞いた。
「もめたのかい?」
「確かにもめました。最近成績が悪いとか、パソコンで遊んでるとか言われて、頭にきて・・・言い争いになったんです。だから、本当は今日は遊ぶ予定がなかったけど、友達に遊ぼうって言って、家を飛び出したんです。」
「なるほど。その友達の連絡先を教えてくれるかな?」
私は、刑事に言った。
「もうすぐ来るよ。さっきメール送ったから。」
「そうかい。」
そして、絵里に最後の質問をした。
「家に帰ってきたとき、何か変わったことはなかった?」
絵里はしばらく考え、思い出したように口を開いた。
「変な男の人が走っていくのを見ました。ちょうど家の前にしばらくいて・・・。顔は分からなかったけど。」


  ユウはかなり怒っていた。無理もない。絵里の家に心配になっていってみたら、嫌味な刑事が、犯行時間何をしていたかとか、母親に会ったことがあるかとか、疑いの目で聞いてきたのだから。
「超腹立つ!なんなの?あの刑事。あいつこそ消えるべきだね。」
  亜季は物騒な事をいうユウをなだめながら、言った。
「絵里の言ってた男が気になるよね・・・。絵里の話では帰ってきたときに争った後がなかったから、警察は顔見知りの犯行だって思ってるみたい。でも、絵里の家から走り去った人に見覚えはないんだって。」
ユウはしばらく考えてこう言った。
「争った後がないからって、顔見知りの犯行とは限らないんじゃない?たとえば、後ろから急に襲われたとか。」
亜季は即座に否定した。
「絵里のお母さんは前から刃物で刺されてるんだよ。後頭部を殴られたとかじゃないから・・・。」
「う〜ん・・・じゃあ、やっぱり顔見知り?」
  亜季は答えられなかった。警察が言うこともわからなくはない。ただ、絵里のお母さんは、玄関からちょっと離れているところに倒れていた。宅配便か何かを装ってドアを開けさせれば、顔見知りじゃなくても犯行は可能。でも、もしそうだとしたらチャイムの音を誰かが聞いていなくちゃいけない。でも、周りの住民は妙な音や人は見なかったと言っていた。
  「そういえば、絵里の家って、父親がいないんだよね?絵里のお母さん、誰かと付き合ってたりしてたんじゃないのかな?」
ユウが何気なく言った。
「付き合っている人が殺したりする?不倫ならともかく・・・・。」
それに絵里は、お母さんはお父さんがいなくなってから男に興味を示さなくなったと言っていた。
  2人は、不安だった。これからもっと恐ろしいことがおこりそうな予感がした。


  亜季たちにアリバイを確認した刑事ー高田秀貴ーは、亜季たちと同じように悩んでいた。絵里が目撃したと言う不審な男は他の住民は見ていないと言う。せめてどんな服装だったかわかればいいのだが・・・。
  絵里は、先程からうつろな表情で外を眺めている。親が死んでいるのを発見したのだからショックは大きかっただろう。しかも、ケンカして、家を出た後だ。自分のせいだと自分を責めているかもしれない。
  絵里に温かいお茶を手渡し、高田は横に座って、話し始めた。
「さっきはお友達や君を疑うような言い方をして、悪かったね。でも、これがおじさんたちの仕事なんだ。
  親を亡くしたことは俺もあるから君の気持ちはよくわかる。けど、お母さんを殺した犯人を捕まえるためにも、君に確認したいことがあるんだ。答えてくれるかな?」
  絵里は無言で頷いた。
「男が家の前から走り去ったと言っていたね。どんな服装だったか覚えてないかい?」
絵里は考えながら答えた。
「紺色の帽子を被ってて・・・・服装も紺色だった。上はTシャツみたいな感じで・・・手に何か持ってた。黒いジャケットみたいなもの。下はジャージっぽいズボンだったと思う。後ろからみたから他はよくわからないけど・・・黒いスニーカー履いてた気がする。」
「そうか。ありがとう。家に帰れそうかい?それともこの部屋で寝る?」
「ここで寝る・・・。電気は消さないで。眠れないから・・・。」
「わかった。みんなに伝えとくよ。でも、いつまでもここにはおけないから、友達とかに泊めてもらえるかどうか明日にでも聞いておくんだよ。」
「うん・・・ありがとう。おじさん。」
  高田は絵里に毛布をかぶせると捜査本部に戻った。もう一度男の聞き込みをしなければ。彼はそう考えていた。


  次の日、絵里を家にしばらく泊めることになったユウから私は衝撃的な事実を知らされた。アクセスのメンバーの一人、由紀の母親がまたしても殺害されたのだ。ユウも絵里も亜季も由紀とはアクセスの中だけの友達で家を知らない。時音という子が知らせてくれたのだと言う。
  時音に、由紀の住所を聞いた3人は、彼女の家に直行した。家の前には他の警官に交じって、絵里の家にいた刑事がいた。
  絵里の話では高田と言う刑事で、警察に泊まったときにはとてもよくしてくれたと言う。信じ難いが。
  高田も自分達に気づいたようだ。こちらに向かってきた。
「君達とは、よく会うな。ここの娘さんとも友達なのかい?」
亜季は適当にごまかした。
「ユウの友達なの。心配になって・・・・。由紀はどんな様子なんですか?」
「家の中にいるよ。変な男を見かけたって言ってた。」
  変な男。絵里も不審な男が家の前にいたのを目撃したと言っていた。
「じゃあ、同じ犯人?」
「そう考えるのが妥当だが、ちょっと妙なところもあるしな・・・。」
「妙なところ?」
亜季は思わず聞き返していた。


?  刑事はしゃべりすぎたと言う顔をした。そしてため息をついた。
「まあ、君達には言った方がいいかもしれないな。他の友達がまた狙われるとも限らないし。」
亜季は、意味がわからなかった。
「今回の場合は、犯人は家の居間で母親を殺害している。明らかに顔見知りの犯行だ。娘さんはその時、家にいなかったらしいが、帰ってきて母親を発見した。その時鍵はかかってたそうだ。」
絵里のときとはまるで状況が違う。でも、不審な男がいた。
「じゃあ・・・模倣犯?」
「その可能性が高い。」
亜季は、刑事に「アクセス」について話さなければと思った。

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